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札幌高等裁判所 昭和42年(く)10号 決定 1967年8月31日

少年 S・K(昭二八・九・四生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は、附添人泉敬作成の抗告申立書記載のとおりであつて、要するに原決定の処分は不当であるというのである。

しかし、少年はすでに小学校一年の頃から、窃盗、女性に対するわいせつな言動等の非行をくり返してきたものであり、昭和四二年六月からは教護院入所の措置をとられたけれどもその非行性は除去されず、かえつて四度にわたつて同院から逃走を試みる等の行動に出たことが認められる。また、性格的にも、爆発性、著しい気分易変性等の問題点を有し社会適応能力に欠けるうえに、脳波診断によるとてんかん性異常波の出現が認められる。少年の保護者は現在でも少年の在宅保護による更生に望みを託し、またそのための熱意をもつていることも窺えないではないが、前述した少年の非行性および性格面における欠陥等を考えると、少年に対しては、現段階において根本的な矯正教育を施す必要があると認めざるを得ない。そして、原決定が少年の年齢等を考慮して少年を教護院に送致し、かつ少年の教護院からの逃走の前歴等を考慮して一年間強制的措置をとりうるとしたことは、処遇の方法としてきわめて相当であると認められる。

よつて、本件抗告はその理由がないから、少年法三三条一項、少年審判規則五〇条によりこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 斎藤勝雄 裁判官 黒川正昭 裁判官 小林充)

参考 原審決定(釧路家裁 昭四二(少)五八〇号、同六六一号 昭四二・七・二六決定)

主文

少年を教護院に送致する。

少年に対し強制的措置をとることができる。

前項の強制的措置をとりうる期間は昭和四二年七月二七日より一年間とする。

理由

(非行事実)

少年は、昭和四二年二月頃より再三にわたつて家出をし、同年六月一五日児童福祉法二七条一項三号により教護院(北海道日吉学院)に人所する措置をとられたにもかかわらず、四度も無断外出を繰り返し、そのうち三度は自宅にまで逃げ帰る等の行動に出たものであつて、保護者の正当な監督に服しない性癖を有し、その性格又は環境に照らして、将来刑罰法令に触れる行為をする虞れのあるものである。

(法令の適用)

少年法三条一項三号

(保護の事由)

1 非行歴について

少年は、早くも小学校一年生のとき映画館に無札入場したことがあり、二年生のときには窃盗事件を二件起こしており、四年生の頃には家庭環境の影響から性に対し強い関心を抱くようになり、電話を利用して女性にみだらな話をし、その後も女性に対しわいせつな行動をしたことがあり、昭和四二年二月頃にも売春をするところがないかと尋ねてまわつたり、路上で自己の性器を露出して女性に性交渉を要求するようなことをしたこともあり、その上小学校六年生の頃より自動車の運転に興味を覚え、自宅の自動車を持ち出して無免許運転をすることが始まり、中学校に入学するや、この傾向が益々強くなり、遂に他人の自動車を窃取してこれを運転するまでになり、昭和四二年五月末頃には父とともに赴いた奈良県や京都市方面でも自動車の窃取、無免許運転を重ね、警察署から児童相談所に対し度々通告もされていたものであり、又上記日吉学院より逃走する際も自動車を窃取した上帰宅していたもので、その外にも自宅より現金を持ち出しては家出をするなど、その非行性は極めて強度であるといわざるを得ない。

2 児童相談所の取扱経過について

少年は、昭和四〇年一一月二五日、親に対する反抗、自動車の無免許運転、家出企図、その他刃物で女性を追いまわす等の理由で、教師、父とともに釧路児童相談所を訪れ、同年一二月二日より同月一八日までの間一時保護を受けたことがあり、昭和四二年三月より、自動車の窃盗、自動車の無免許運転が頻発するに至り、警察署からの通告も続出したため、同年六月一五日児童福祉法二七条一項三号により教護院日吉学院に入所する措置がとられたが、短期間のうちに四度も同学院より逃走を企てたものである。

3 保護者の養育態度について

少年は幼少期に父母がともに繁忙であつた等の事情により祖母の手で養育され、躾面が極めて不十分のまま放置され、その上父母ともに少年を盲愛しており、現在では生活に余裕があるため少年を物質的に甘やかしている。しかし一方において、少年の父は少年の補導にかなり心を砕いており、度々釧路児童相談所を訪れて相談を受け、又昭和四二年四月一六日内観法による訓練を受けさせるため少年を奈良県に連れていつたこともあつたが、いずれも失敗に終わつた。父は現在でもなお家庭内における補導に期待をかけ、家族全部が離島に移住して少年の矯正を行ないたいと考えている。

4 少年の性格について

少年は、爆発性で、気分易変が著しく、落着きが全くない上、些細なことで興奮しやすく、自己を統制する能力に極めて乏しい。その上小学校五年生の頃頭部を強打したことが原因してか、脳波診断によると、てんかん性異常波の出現が認められる。

5 処遇について

以上の事実を総合して判断すると、少年の非行性は極めて強度である上、性格面における欠陥も著しいので、父母の熱意のみによつて、少年の全行動、全性格が矯正されるとは到底考えられない。少年に対しては、早期において根本的な矯正教育を施す必要があり、少年の年齢等も考慮して、少年を教護院に送致するのが最も適切な方策であると思料される。

6 強制的措置について

少年については、釧路児童相談所長より、強制的措置をとる必要がある旨の送致もなされているところ、少年の性格、上記日吉学院における少年の行動等に鑑み、少年に対する矯正教育を実効あらしめるためには、その行動の自由を奪いあるいは制限する必要があると認められるので、少年を強制的措置のとりうる教護院(既に入所許可の回答を得ている国立武蔵野学院が適当であろう)に収容すべきである。しかしてこの強制的措置をとりうる期間は諸般の事情を考慮して、昭和四二年七月二七日より一年間と定めるのが妥当であると思料される。

7 結論

よつて、少年法二四条一項二号、一八条二項に従い、主文のとおり決定する。

(裁判官 喜多村治雄)

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